フランス年金改革、漸進的に64歳へ

ここ2,3ヶ月大きな話題になっているのが、<年金改革>問題。

もういっぱい報道されて耳にタコやそれからイカまで出来ている人も多いけど、多くの人に(特に若い年代の人)にとって、切実な問題ですよね。

デモやストライキも繰り返し行われていて、そして3月7日の火曜にはまた公共交通機関を中心にストライキが予定されますが、だんだんと話題にはなりにくくなって来てます。(それよりも学校の休暇時期に当たっていたので多くの人の頭の中は雪山などのバカンスで一杯なのかも知れませんね)

まあ、デモとかやって抗議していても、結局は3月末に議会で決定、9月1日から施行される運びになるはずで、年金制度改革間近のフランス。就労期間が長くなるのですが、日本の年金とは制度がかなり異なります。その一部をご紹介。

目次

満額年金掛け金を納める年月=43年に

何にしても2年伸びるのは「嫌っ!!」ってんのは理解できます。しかし現行は62歳でヨーロッパでも年金満額支給開始年齢最年少なんです。これを64歳にする、しかもいきなりじゃなくて、まあ、段階的に64歳にするとのことなのです。

改革後今の大体50歳以下の年齢の人から満額支給を受けるためには43年間の就労年数(年金掛け金支払い年月)が必要になります。64歳までに43年間というと、21歳からずっと年金の掛け金を収めないといけないことになりますが、日本のような国民年金のしくみは無いので働いていない学生のうちから支払うことはできません。

ちなみに年金改革をする前の現在でも、満額がもらえるためと就労年月を満たすために62歳以降も働く人も、かなりいます。なぜ就労年月を満たす必要に迫られるかというと、足りない年月があると足りない分について支給分からペナルティ減額がされるからです。
これとは別に、不足した年月分を後である程度「買い取る」制度もあることにはあります。

逆に辞めたければもちろん早く仕事するのを辞めることも自由です。その場合、年金の掛け金を収めた期間に対応した年金が支給されます。また国民年金のような制度は無いので、生涯無職なら掛け金を納めることはしなくてよいということになります。
その代わり一般に言う年金の支給はありません。(これにもフランスの場合は生活保護という救済制度があるのですが)

それから、専業主婦/主夫向けの日本の第三号被保険者制度に相当するものもありません。

他の国々はいつから年金がもらえる?

ちなみに各国の一般的年金支給開始年齢はこんな感じです。

主要各国の年金満額支給開始年齢(2023年2月現在)

年齢備考
フィンランド65歳
ノルウェー67~70歳を自由に選択
スウェーデン65歳
デンマーク67歳2030年から68歳
オランダ66歳2024年から67歳
ベルギー65歳~2025年徐々に66歳
~2030年徐々に67歳
ドイツ66歳段階的に引上げ中で1964年以降生まれは67歳
オーストリア男性 65歳 女性 60歳女性は2023年から半年刻みで2028年までに65歳に
アイルランド67歳2028年に68歳に
イギリス66歳段階的に引上げて2028年に67歳
スイス男性 65歳 女性 64歳
イタリア67歳
スペイン66歳2027年まで年2ヶ月引き上げて最終的に67歳
ポルトガル66歳4ヶ月
ギリシャ67歳
オーストラリア67歳
アメリカ合衆国65歳~67歳生まれた年により段階的に引上
カナダ65歳日本と同様二本建ての制度。国民年金にあたる老齢保障年金は徐々に年齢を引上げ2029年には67歳開始に
日本65歳60歳から繰り上げ/75歳まで繰り下げ可能
フランス62歳2023年9月から段階的に上げて最終的に64歳の見込み

軒並み65~67歳ですね。今後も改革があるとしたら、いったいどこまで高齢化するのかと怖くなることさえあります。まあ、元気な方は80歳過ぎても現役で仕事していらっしゃいますが・・・。

各国の年金受給年齢は個人で調べた限りの情報ですので誤りの可能性もありますことをあらかじめご了承ください。
 また、間違いがあれば訂正しますので、もしよろしければご教示ください。

キャリア途中からの移民組は結構悲惨

それでも一般に企業は64歳になるまで雇用する必要ができるので、追い出されるのが2年伸びたと我々のように中途からフランスで働いている人たちはちょっと喜んでいるのかも知れません。なにせ途中から就労者の一員として参加したのでとても43年間年金掛け金を払うという、満額支給とペナルティ無しの条件を満たせない人がほぼ全員ですよね。

そして、64歳になって普通に会社を辞めて年金をもらうことにすると、不足している期間に対してはこのまま制度が変わらなければ、今と同じくやはり支給額からペナルティが引かれてしまうことになります。

日本の年金の話になりますが、海外で日本国籍を維持して日本の国民年金を掛け続けているとすれば、65歳から年金をもらえます。最高満額は年間約79万円(現行)で払込年月に比例しての支給です。海外から払い込みをしていなくても日本での加入状況に応じて支給されます。また、海外に居る期間は制限無しで「カラ期間」として加入期間に参入できます。日本在住時と合計して10年以上あれば受給資格が得られます。日本で会社勤めをしていた期間が何年かある場合、厚生年金もそれに応じてもらえます。
つまり、とにかく日本で掛け金を支払った期間があれば海外に住んでいても、また受給資格を満たす10年をクリアー後に現地の国籍を取っていても請求が可能で何らかの年金がもらえ、住んでいる国の銀行口座に振り込んでもらうことも可能です。


しかし例えばフランスに限らず海外留学やワーホリをしていた期間とかはカラ期間ではあっても掛け金を払っていないことになり、日本の年金受給額は当然少なくなり、そしてフランスの年金も加入期間が短いので少ないですね(それにペナルティ減額が付く)。

・・・それではどうするかです?

私は事情があって退職したのですが、67歳になるまで個人事業主をやりながら受け取りを繰り下げています。なぜなら67歳まで待てば足らない分は帳消しになり、ペナルティ減額(décote)はないからです。
ただ、これはペナルティ減額が無くなるだけでもし満額に必要な年月の掛け金を納めていなければ、やはり満額ではなく、その掛け金を納めた年月分相当だけが計算されて支給されることになります。・・それでもペナルティが引かれないのでかなり違います!

会社員時代の、とある先輩も、このために必死で67歳になるまで頑張ってハラスメントにも耐えながら会社に貼り付いていました。

日本で働いていた年月を考慮してもらえるはずですが

しかし、まだ救済の手が差し伸べられるはずです。日本とフランス間では2007年から社会保障協定が発効しているので、日本で働いた期間があればそれを評価してもらえるはずなのです。

ただし、これは年金を請求する時になって自分の過去の履歴を申告し、それに基づいてフランスの年金機関から日本年金機構に問い合わせた後の決定になるので、年金額試算シミュレーションなどで事前にはっきりしたことを知ることはできません。

また、フランスと日本では年金のしくみもいろんなところで微妙に異なりますし、一人ひとりの立場や状況などはもちろん全員が違うので、誰かの例を取って自分に当てはまるということになるとは限りません。


最近になって外国で働いていた人への説明PDFが出来たのですが、な~んとなく説明が中途半端な気がするのは私だけでしょうか。EUの国や欧州経済領域、スイスでの就労経験がある人はやっぱり便利でお得だな、と思うだけ(笑)。
国外でのキャリアのカウントについて(ダウンロード可能)
https://www.lassuranceretraite.fr/portail-info/files/live/sites/pub/files/PDF/Gip_Expat.pdf


以上のように結構厳しいですね。年金だけに頼ってもいられない時代に入っていると肌で感じています。私は時々銀行の回し者のような記事も書いてますが、やはり備えはあった方がいいと思います。リスクの少ない方法での蓄財がやはり得策ですね。

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