選択的夫婦別姓?フランスでは4つの苗字から選べます

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先進国で結婚して姓が変わるのはもはや日本だけ

先日必要があって大昔日本で働いていた頃の同僚に連絡を取る必要がありました。
他の元同僚からは聞いていたのですが、彼女はその後結婚して苗字が変わっていたのでとまどいました。私の中では彼女はH(苗字)さんで登録済なのに今はOさんと呼ばなければいけません、私の中では今もHさんなのに。
いやはや頭の中がひっくり返る体験でした。 

日本で日本人同士が結婚すると夫妻のどちらかの姓を使って新戸籍を作ることになりますね。90%以上が夫の姓を選択、というよりそれがスタンダードだから選んでいるわけですが、SAKURAの昔の友人や同僚の中には奥さんの苗字に変更後、既に人生の半分以上を過ごしている男性も若干います。彼らは奥さんが一人娘で、

「〇〇家の存続のためにウチの籍に入って(婿養子に来て)」

ってお願いされたんだと思います。
・・・旧法の時代ではなくなっているので今は結婚すると両親の戸籍からは除籍になって新しい戸籍を作成するので<家の存続>なんてのは法的制度的には無いはずなのですが・・・。

または上記の私の知り合いは該当しないのですがよくある佐藤さんとか田中さんとか高橋さんとかなら

「小さい頃からいつも同じ苗字の人が他にもいて下の名前込みで呼んでもらうとか、紛らわしくてしょうがないんだよね。過去に同姓同名もいたし。おっ、苗字変えるチャンス!」

と、自分から”婿養子に入る”ことを選ぶ人も中にはあるかもしれません。

結婚後苗字をどちらかのものに統一する義務は先進国では日本だけのようです

日本では上記のような例外はあってもほぼ全部と言っていいほど女性側が生来の苗字を変更しています。それがスタンダードだからです。法律上では「どちらかの苗字」ということで何も女性が苗字を変える必然性はないのですが、どちらかに決めなければいけないので結果として社会の慣習に合わせている訳です。

しかし、他の先進国では一般にそれは既に前世紀の風習となっているようで、メジャーな国のほとんどでは生来の姓の変更は強制されていません。下のリンクはかなり前の情報ですが、それでも既にこんな状況。日本とはまるで違います。

http://www.hirokom.org/minpo/siryo01.html

上の見出しにようですと斜め字にしてあるのは、断定してしまうにはリサーチ不足だからなのですが、おそらくはこの通り日本だけ、です。
選択的夫婦別姓を求める訴訟や運動もずっと昔からありますが、何も手を付けられてはいません、この旧態以前の状況は生来の日本国籍者に二重国籍を認めていないのと同じ、どちらも理解しづらいです、はい。

昔フランスで結婚した時の出来事

わたしが結婚したときはインターネットが普及し始めた頃で、まだまだ情報には疎かったのです。当時はネット音痴で検索しようとも思いつかなかったし果たして検索に引っかかる有益な情報があったかどうかわかりません。

外国人と結婚しても日本人の苗字は変わらないとは聞いていたのですが区役所から家族手帳をもらっても自分の欄は日本の苗字だけだしダンナに聞いても「ウーどうだったかな」なので腑に落ちない・落ちないの一方。そこで結婚式から1週間ぐらいして当の区役所の担当女性のところまで行きました。当然平日昼間なので私1人で。まだ全然フランス語がおぼつかない状態でしたがよくぞ行ったな、と今では思っています。
その時はなんとしても白黒つけたかったんでしょうね。担当者さんには既に1,2回会っていて親切な人だったこともオジオジせず行けたと思います。

ただ担当の女性の回答もちょっと曖昧でした、恐らく外国人との婚姻はあまり扱ったことがなかったのではっきりとは知らなかったのでしょう。

SAKURA「アノ、ワタシノミョージワナニナノデショカ?」
区役所担当女性「えーと、相変わらず●✕さんですね」
SAKURA「エッ、コレマデノモノヲツカッテイーノデスカ?」
区役所担当女性「そうですよ」
SAKURA「ソレヲトーロクスルヒツヨーワアリマスカ?」
区役所担当女性「いいえ、そんな必要はありませんよ」
SAKURA「ソーデスカ・・・」
(私のセリフは来たばかりの外人が使うフランス語なのでカタカナ表記にしてます)

・・・そしていつから、そしてなぜ婚姻後も出生時からの苗字を使うようになったのかという質問には、彼女もこうなるように決まった年に関しては知らず、確か1980年代からで、なぜなら離婚が多いので・・・、と語尾の部分は濁して回答。

なるほど一生の内コロコロ苗字が変わると混乱の元になりますよね。

いろんな苗字を使ってました・・・。

そして1年後就職先が見つかってその会社での登録名もその通り「旧姓」で登録、給与明細の名前も「旧姓」、日系企業でしたので日本の得意先での受けも考えてそれが普通だとも考えていました。社内での呼び名も日本の苗字+さん付け。

そして数年以上も経ちました。(ここがフランス的で信じられないんです)勤務していた会社は総務に関しては現地フランス人社員が担当しているのですが、ある日突然総務から電話が入って

「どうして社会保障に登録した苗字を使っていないの!!!」

と叱られました。一悶着。
だってそのままにしてきたのはアンタ達でしょ、と反抗したかったですけど睨まれると色々不利にされるのでね。この辺、日本のお局制度とおんなじ。
それ以降社内の総務関係書類だけダンナの苗字になりました。

総務女史いわく「給与明細と苗字が違ったら年金受けられないわよ」ということですが、記録は番号で管理してるはずだし身分証明書等で本人証明できるんじゃない?と腹の中で悪態ついてやりました。
日頃からもろ評判悪い総務でした、ああ嫌なこと思い出した・・。

社会保障に登録時に使われたのはそうなんですよね、ダンナの苗字。

社会保険の健康カード(Carte VITAL)=>当時は外国人には就職しないと自分自身の番号では作ってもらえませんでした。

就職後総務から手続きをしてもらったのですが個人的に役所から連絡が来て日本の戸籍謄本から法定翻訳してもらった”フランス式戸籍抄本”を送付したらフランス姓のみで登録完了。これって昔は女性の名字が変わった旧来のしきたりなのかしらん?
(でも今カードを見せて医療行為を受けると、ちゃんと<通称>のフランス姓と<生来の姓>日本姓との両方が記載されたカルテが作成されます。健康保険の利用者用サイトはリニューアルされていて少し前は日本の苗字も見れたのに今は見れないようになっているのですが、病院関係者は両方見ることができるようです。ほらみろ総務女史。結局社会保障に登録された通名はうわべの名前、ってところです)


そして、
銀行口座=>結婚後初めて口座を開設したのですが滞在許可証の受付証(レセピセ)とパスポートを持っていって見せたら、なんとも聞かれずにフランス姓のみで口座作成。

こういう訳で、自分でどの苗字と決められないところではダンナの苗字になっていました。

なんか疑問だけど日常生活にはほぼ影響もないのでそのままにして他の場合、例えば自分で名前を登録するネットショップには気分で複合性を使ったり日本の苗字だけにしたりでアカウント登録とか。まあお買い物に使う名前なんて結局荷物が届けばいい訳だしどっちでもいいですよね。

しかし、最近になって起業準備に色々調査していたら、 個人企業はブランドとして例えば「SAKURAオフィス」のような名称を顧客向けに使用してもいいが、企業登録は個人名で行い、顧客からの小切手などの入金も登録の個人名で作成した銀行口座で受け取ること

 ということがわかり、うーん、それではどうしよう、どの名前で登録すればいいの?
となりました。

調べた結果(ではなくフランスでの婚姻後どんな苗字を使うかは今は政府広報サイトにちゃんと載ってますが)が次です。 

結婚後はなんと4つの苗字が選択使用可能

これは結婚後の苗字バリエーションです。子供の苗字選択についてはまた別の規定があります。

  1. 生来の苗字をそのまま使用。

    男性はほぼ全員そうします。女性も自分の名前で長く仕事をしている人はこのままにする場合があります。また、生来の苗字は公式な文書(出生証明書や結婚証明書、身分証明書、その他)で正式登録する場合に使います。つまり公式手続きには出生時に決められた苗字を一生使います

    この下からが通名(nom d’usage)となります。
  2. 配偶者の苗字のみを使う。

    ほぼ全員女性です。昔は日本と同じように本当に苗字を変更していたはずでお祖母様たちの死亡広告などにはよくマダム〇〇、の後に旧姓▲▲が(née ▲▲)と書いてあります。

    身分証明書に正式に載せるには自分の苗字の横にépouxまたはépouse、そして配偶者名を記載してもらえばいいのです。わたしのようにフランス人と結婚した人の身分証明書(外国人の滞在許可証)上には本人の苗字の横にépoux/épouse、そして配偶者名がありますね。滞在許可の申請書には特に希望する通名を記入する箇所は無いのですがこれがデフォルトになっているようです。

    私が銀行口座やcarte VITALを作成してもらった際、何も言わずにダンナの苗字にされたのはこういう訳だったのですね。
    でも滞在許可証を見せない限り生まれつきこの苗字だと勘違いする人もいるのでちょっと不便かも。

    次の2つはダブルネーム、両方の苗字を入れるので、これは生来の苗字と追加苗字が一緒に入っていてわかりやすいですね。
  3. 自分の生来の苗字の後に配偶者名

    例: Madame Carole Martin-Bernard。ずっとCarole Martinさんで仕事もしてきたのですが、ご主人のBernard氏の苗字も入れたいということで後に追加。もちろん公式書類には相変わらずCarole Martinさんです。2つの苗字と苗字の間には通常ハイフン を入れます。
  4. 配偶者名の後に自分の生来の苗字

    上記とは苗字の順番が逆です。同じように両方の苗字を使うのですが順番が違うだけです。もともとの名前を活かしたいなら後に付け足しの3.の場合がわかりやすいのですが、字づらがいいとか声に出して読んだ際収まりがいいからこちらに決める場合もあるということでしょうか。

3.と4.の場合は身分証明書にはépouxやépouseではなく、usageと記載されるそうです。例えば、usage Martin-Bernardなど。ただ外国人の滞在許可証にはデフォルトではこうなってないのですよね・・・。
でもわたし、某ネットバンク開設の際に勝手に複合性使ってましたけどお咎めも調査も無しでしたが。
銀行によるのかな。個人事業主としての起業の際に、とりあえずこの口座を使うので日本の姓に変えましたが。

下はフランスのIDカードのネット申請時の画面です。
フランス人だと通名にお母さんの姓を使うこともできます。カトリーヌ・ドヌーヴという日本でも超がつくほど有名な女優さんがいますが、ドヌーヴは母方の姓で通名(芸名)として使っているようでおそらく出生証明書(戸籍)ではお父さんの姓で登録されていると思います。

身分証明カード申請時には自分で通名を指定できるようになっています(Source: ANTS)

付録:日本のパスポートへの配偶者名追記?

そういえば日本大使館で結婚届を出す際に、

「パスポートの名前にダンナ様の苗字を付け足せますよ」

と案内を受けましたが、わたしは興味なかったので何もしませんでした。日本での戸籍は私が筆頭者の戸籍で私一人だけが記載、備考欄に【●●年〇月●●日▲▲国籍の〇〇と☓☓で▲▲国の方式で結婚】、と結婚の事実が書かれているだけです。ただ家族、特にお子さんの事を考えると併記することを選ぶ方がいいかもしれません。

これには確か婚姻後半年以内という期限がありそれを過ぎると家庭裁判所を通す手続きが必要になるそうです。

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