国外に持っている金融口座の申告義務

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外国に金融口座があるのを黙っていてはいけません

フランスでは多くの地方で来月初めまでがネットでの税金用申告時期ですが、2019年1月1日から施行された『外国金融口座申告義務』(改定版)を見逃してはおけません。

私は2019年5月、おそらく知り合い・友人の日本人に聞いても正確な情報は得られないのでは、と危ぶんで政府機関や税理会計士の(これは結局は自分の会計事務所の宣伝ですけれどね)サイトなど訪問して調べた結果、一度ネットで行った所得申告をもう一度訂正して送信することにしました。(申告期間内であれば何度でも訂正は可能です。)

この時、何が変わったかと言うと、これまでは申告対象期間において、
「外国に開いた、使用した、あるいは閉鎖した金融口座」について申告するものであったのですが

所有している

という一言も追加されました。
これは何を意味しているかというと、 昔作ってその後忘却の彼方にあって残高移動も何もない静止状態の口座も申告する必要ができた、ということです。

この変更、見逃している人も多くなるのを見越して罰金対象者の範囲拡大のための追加だと悪く解釈したくなります、あんまりTV等でも大きく報じられていなかったんですよね。なにせ色々あって支出が増えたので政府はお金無いですからね。ちょっとでも罰金収入上げたいでしょうね。特に新コロナ禍の今はもっともっと収入が欲しいはずです。

ここで注意することは、単に通常<銀行>の口座だけでなく、ネット銀行や同様に使えるもの(デジタル決済サービス機関など)や投資口座(株式、通貨、デリバティブ、暗号通貨等)および生命保険、も申告対象です。
また現地の口座管理に代理人/代行業者をあてている場合も申告を記入することになっています。
*もっともこれは正式に「代理人」依頼契約を結んでいない家族間ならうやむやにできそうですね。

それで、申告せずにバレたら少なくとも1口座/年につき1500ユーロ、更にその口座が投資目的の口座などで収入があった場合への課税率割増が課されるとのことです、罰金等の詳細はここでは省きますが、この1500ユーロ(約20万円)と聞いただけで怖くなりますね。

また、

また、もしも持っている非申告口座がCRSの情報交換に加盟している国以外にある場合別の罰金額が適用され、なんと10,000ユーロ/1口座となります。


さてこのCRSというのは何でしょうか? これは加盟国相互間で自動的に情報交換する報告基準です。

日本が絡むCRSの情報交換は2018年9月に開始されています!

OECD諸国の国税当局間で自動的に情報交換する国際基準「CRS」の運用が2017年から段階的に始まっていますが、日本が参加したのは2018年、この時は初回のためか2017年度分の大口預金の情報のみでした。

このCRS(Common Reporting Standard:共通報告基準)は、金融機関に非居住者の口座がある場合、金融機関が各国の税務当局を通じ、相手国政府にその口座情報を共通の基準で報告する仕組みですが、このように非居住者として口座を持っているとその人の居住国(つまり居住して所得税など税金を納めている国)に、通知が行きます。

そしてフランスではその後のデータ突き合わせで申告していない口座だと判明すると上記罰金になるわけでしょう。

渡される情報:
個人情報 氏名、住所、生年月日、居住国、口座番号、(マイナンバーも??)
収入情報 利子、配当、株・社債の譲渡代金などの年間受取総額
     (入金に関わる全ての可能性あり)
残高情報 預貯金残高、有価証券残高などの口座残高
*個々のトランザクション情報は無く、金額は年間の集計だとのことです。

CRS参加国
この通り2023年にはヨルダン、モルドバ、モンテネグロ、タイ、ウガンダ、ウクライナ、
そして2024年にはジョージア、ルアンダ、チュニジアが加わる予定です。
https://www.oecd.org/tax/transparency/AEOI-commitments.pdf

要するに段階的に参加国が増えていて、最終的には一部を除いてほぼ全世界の国になるものと見られます。

日本に口座を残しておくとリスクがある?

これまで読むと日本で生活している時に作った銀行口座を登録住所を日本の実家の住所などに住所変更して「居住者」のままにしてある場合、CRSでは「非居住者」の口座の情報を交換しているので、情報は日本から出ない、そのため申告しなくても大丈夫と思えます。

しかしフランスの外国口座申告義務には特に「非居住者」として外国に持っている口座とは明言してないので口座がある外国の住所を使って「居住者」として所有している口座が見つかった場合も処罰の対象にするとも解釈できます。

でも、今のところは大丈夫そうです。
ただ将来において調査の範囲・方法が変わったり、あるいはそうでなくてもなんらかの形でバレてしまう可能性もゼロとは言えません。その場合はアウトでしょうね。

マイナンバーによるチェックも有り??

日本の金融機関では2017年からは基本的に日本に住民票が無いと口座は開けないようになっています(これにも抜け穴があるのですけど)。開けるとしたら非居住者としての口座。これなら疑問点ゼロでフランスで申告が必要ですね。

しかし将来もしかして日本国内に現存するあらゆる口座とマイナンバーを確実にリンク付けして、さらに実際はどこに居住しているかのチェックが入れられることになるかもしれません。日本在住でないことがわかった場合、非居住者口座への変更を迫られる、または国外住所は受け付けられないので解約(解約が実際に在日銀行支店で行えない場合、口座は凍結???)の運びになるでしょう。

またマイナンバー(私は持っていませんが)の使用を今後さらにキツく義務づけてくるかも知れません。例えば今はマイナンバーが無ければ海外への新たな送金先に送金はできないようになっていますが、既登録の送金先へお金を送るにもマイナンバーの入力が必要になるかも知れません・・・・・。

日本に残した口座はどうする?

日本国内の口座をそのままにしてある場合、通常は

このままにするか、
それとも非居住者口座に変更するか、
解約するか、

この3つからの選択ですが、非居住者口座への変更は限られた銀行でしか受け付けていません。また解約手続きは帰国して本人が赴かないと受け付けてくれない金融機関がほとんど、そのため残高がわずかならこのまま放っておく(保持する)人も多いかと思います。

困ったものですね。

2019年当時、私は残高ゼロもしくはゼロに近い口座を4つも持っていたので、これらについてはとりあえず全部申告することにしました。
*現在は解約は日本の支店に行かなければできないメガバンクM銀行を除き、全部解約してあります。

ネット申告の際、申告ページの最後、8. DIVERSの8UUにチェックマークを入れて後は3916-3916 bisのフォームに該当事項の入力となります。

参考: ペーバーバージョンのフォーマット(pdfファイル)↓
https://www.impots.gouv.fr/sites/default/files/formulaires/3916/2022/3916_3823.pdf

あらかじめ口座開設日、銀行の英語名、口座番号、口座のある銀行支店の住所などを調べておく必要はありますが残高記入箇所はありません。銀行が複数ある場合は口座ごとに1フォームの記入が必要です。

金融機関の名前や住所には「, – . /」などの記号は使えません。それで何度もやり直すはめになり、最終的にはスペースで代用したり抜かしたりしたのでなんだかおかしな住所になりました。

なんなのでしょう、これ?! サイトのシステム上使えないのかも知れないですが・・・。

ちょっと戸惑うことがあります。この2022年からサイトの設計が少し変わって限りなくやりにくかったです。私のやり方が悪かったのか、去年入力していたのにもかかわらず全口座の分を再度入力する必要がありました、勘弁して欲しい。また、相変わらず記号は使えないし、余分なスペースが入っているとエラーになりました。見えないので気づかないですよ。怒(-"-)怒~~~。

国外の金融口座申告のまとめ

これまでの内容をまとめると、

  • 日本に残してある口座は口座への入金が無くても申告しないと将来突然罰金通知が来るリスクがある。
  • 使う予定のない口座は郵送・ネットで解約ができるものは解約するのがベター。
  • 銀行側のきまりで海外から手続きできなくてすぐには解約できないものはとりあえず申告しておく。
  • 申告期限内なら何度でもやり直し可能。また、税金申告期間を過ぎても9月から適用の税率通知が届く前なら申告訂正処理を行える。
  • 口座申告は日本の口座だけではなく全世界にある口座が対象で、投資口座・生命保険、デジタル決済サービス口座なども含む。

またこちらのカナダ在住の人のブログには海外に住む人のマイナンバーについてかなり詳しく解説してあります。よろしければご参考に。

番外:PayPal口座は申告??

結構フランス人の皆さんでも疑問に思う人がいっぱい居るのですが、PayPalの口座。フランスの住所で登録した人はフランスの口座だと思っているかもしれませんが、実はPayPal Europeはルクセンブルクにあるので『国外口座』なんです。
預金機能はありませんが、決済に使えたりで一応銀行に近いスタンスのデジタル決済サービスですね。登録クレジットカードの番号をネットショップ業者に伝えることなく利用できるのでお買い物に使っている人も多いハズです。

これについては、主にショッピング決済に使っていて、資金源が当人のフランスの銀行に紐付けされていて、また取引の合計が年間10,000ユーロを越えない個人の買い物(あるいは自分個人の不用品を販売した入金)用の口座(要するにお財布口座)なら申告不要とのことです。

(Source: https://bofip.impots.gouv.fr)

年間1万ユーロものの買い物は普通の人ならやらないはずですよね。

私はパーソナル口座とプロ口座と2つ持っています。パーソナルの方はフランスやその他の国のネットショップでは使える所が多いし結構便利なのでよく利用していますが、これは申告していません。PayPalプロ口座の方は、フランスの銀行に紐付けしてあるのですが、念の為『口座は全て商売用に使っている』というところにチェックマークを入れて申告しています。

同様のデジタル決済サービスは他にもありますが、利用するサービス内容はほぼ同じなのでPayPalに準じるはずですね。

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