ほぼ世界中でコロナのためにお家にこもり気味の人も多いですね。今日はその住まいの乗っ取り犯罪についての話題です。
これは自分の家やマンションを誰かに乗っ取られ、タダで住まわれるということですが、日本でも賃借人が立ち退き通告に従わなかったり、所有しているものの空き家になっているところを見知らぬ人間が占拠していたりするのは極くたまにあります。
フランスでも同じような問題があるのですが、結構よくある話なのですよ、これが。そして不法占拠者が退去した後、その住居がとんでもない状況にされてしまっていたということがほとんどです。その回復処理には多大な費用と時間が必要になってきます。
世界的にもこのスコッター(英語)、(*フランス語ではスキャター(squateur))、という無法者に不動産を占拠されてしまう例が多々あるそうですね。
さてこれから見て行くのは今年の夏の終わりに大問題になった件を中心にフランスでほんとうに起こったスコッター事件です。
別荘に来たら不法占拠の家族が住んでいた。鍵も取り替えられて入れない・・・。
36年間所有してきたコート・ダジュールはカンヌの近くの一角にある瀟洒な一軒家。リヨン在住の70代の夫婦が今年の夏の終りに遅いバカンスを兼ねていつものように別荘にやってくると、見知らぬ家族が中に居ます。鍵も取り替えられていて入れません。
何が起こったかまったく理解できないまま、仕方がないのでその夜は車中で宿泊、自分の持ち家なのに入れない、400キロ以上車で移動してきた旅の疲れを取ることもできない・・・。実はここを売却する考えで家の内覧訪問もスケジュールしていたのですが自分の持ち家なのに他人に勝手に使われています・・・。
これは24歳と25歳のカップル(妻は妊娠中+2人の幼い子ども)による不法占拠。パリ郊外に住んでいたところ、麻薬関係などいろいろトラブルがあって南仏に逃れてきたらしいが「賃貸契約はある」「鍵ももらった」(勝手に別の鍵に替えている)etc.とか言って譲らない。申立によると、ここに到着したとき、ガソリンスタンドでカンヌの下町に住むという人物に出会い、1500ユーロ払ってこの家に入ったそうである。完璧にスコッターであると自覚していたというが夫婦とも無職で夜逃げしてきた身で他に住むところが見つからなかったと言っている。
町長を含めて現地で宿無しになった家の所有者への対応に右往左往しているうちに、夫のDVが元で妻がこの家から逃げ出し、DV被害者の保護施設に。これきっかけになり、DVを理由に警察介入が成功した。おかげで即この家から追い出すことができたが3週間の占拠の結果、家は見るも無残に荒らされていた。
10月の末に行われた裁判の結果、執行猶予付きの懲役刑と罰金と賠償金合計15000ユーロの判決が出ましたが、この金額、ちゃんと支払うのかな・・・。いちおう一家は別の南仏の街の公営住宅に入ることができたとのことでした・・・。
両親と住んでいた家に来てみると、複数の外国人が不法居住、家財が盗まれ思い出の品なども破壊
マルセイユの住宅街。両親が亡くなり、彼らが住んでいた家を相続のため売却しようと訪問したところ、そこには何人ものの見知らぬ外国人が住んでいました。敷地には何台もの車が停められていて、ほぼひっきりなしに人が出入りしています。
持ち主の女性は怖くて入ることができません。人間の数が少ない頃を見計らってTVレポーターが中のひとりに突撃インタビューを試みました。
この女性は一応ブロンドの白人女性。ルーマニア語しか解さないのでレポーターの持つ携帯の通訳機能を使って会話をしました。(今は便利ですね)
聞き取れた内容は、
ルーマニアから来て大人数で住んでいて、子供もいます。ここに住んでいることでは感謝しています(このメンタリティがよくわかりせんね)、でもすみません、謝ります。そして私の子供たちにもごめんなさい・・・。(何これ?)
実に不可解な申し訳でした、きっとレポーターが来るのを見て女性に対応させたと思われます。家の2階やテラスには男たちが数人居てじっとこの様子を注視している感じでした。TVカメラが入っているためかへたな動きはできない、と暴力的な行動には出ないんだな、という雰囲気です。背後に駐車されているクルマは結構いいクルマですね。
ルーマニアから来た移民(おそらくはジプシーまがいの集団)に占領されていた広い一軒家。長いことかかって今年の夏にやっと退去させることに成功したが、所有者姉弟が入ってみると、家は見事に荒らされ破壊され、見るかげもない状態。幼い頃の思い出の品が破壊され、両親の大事にしていた値打ちものの品々ばかりか、台所の水道蛇口までも取り外して持ち去られていた。相続のため売却する予定だったが、これでは売れないので少なくとも住める程度には修復する必要ができ、損害大。
留守にする間、家を賃貸に出したら賃貸料不払いで居座られる
75歳の女性が海外県南米ギアナに行く姪について行く間、親から受け継いで住んでいた南仏ガール県の一軒家の1階と2階を2人の別々の賃借人に貸したところ、帰国後この連中によるトラブルに悩まされて来ました。大統領や県庁、大臣に陳情の手紙を書いても梨のつぶてです。
2階に住んでいた賃借人は1年間家賃不払いの挙げ句に夜逃げ。階下の賃借人は門に入ったところに車を停めて外からのアクセスをブロック、空いた2階を使い出した。持ち主の女性が現地に戻った時、とうてい中には入れない、宿泊もできないのでホテル住まいを余儀なくされる。その後市役所が貸してくれたアパートに仮住まいをしながら裁判にかけたところ賃借人は出ていく判決にはなったが、判決の時期が11月に入ってしまったので『冬の退去猶予期間』ということで3月一杯までは追い出せない。裁判官はなんと「その間は空いている1階に住みなさい」とアドバイスをした。
このようなおかしな賃借人との共同生活は完璧に不可能なので、女性は途方にくれている。家はやはりかなり荒らされ、汚されているのでこの回復にも費用はかかる見込みである。
(『冬の退去猶予期間』は11月から3月までの寒い間はたとえ賃借人に瑕疵があっても家主は4月になるまで待たなければ追い出せないという、賃借人保護の法律に基づく期間。)
幸いなことにこの事件がTVでレポートされた後、隣の県の議員さんが動き出し、女性が家を取り返すのは早まりそうです。
しかしへたな人間に住居を貸すと大変なことになる見本ですね。でも、いくら契約時の書類が揃っていてもその人間性までを100%知ることは不可能でしょう。
わたしがパリで最初に見つけたアパートの前の賃借人も不動産屋を通しての賃貸で書類は一応揃っていたらしいですが、ドラッグをやっていた可能性もあるトラブルメーカーで大家が建物全体の住民の陳情の助けを借りて追い出したということでした。ですが、そのアパート自体も建て付けが悪く大変な建物で早々に逃げ出すように引っ越しました。パリではそんなところでも借り手があるんですよね。
不法占拠者には2タイプ、そしてネット教科書も
さて、この不法占拠(不法居住)者には大きく分けて2タイプがあるそうです。
- 住むところが無いから占拠、またはある人物に騙されてお金を払って居住
- 完全に不法居住を楽しんでタダで利用している
この2タイプ、そして2つが混合したタイプが多くのスコッターのプロフィールなのですが、最初の[騙されてお金を払って]というのには住んでいる人間はほとんどが契約というものがどんなことかもわかっていない無知を利用された被害者である場合もあって、一概に犯罪者とは言えないケースも見られます。
貸したアパートにいつの間にか別人が住んでいて、家賃は入ってこない、その住人はアパートを[紹介]してくれた人間にお金を渡したのでそれでもう済んだと思っている・・・こんなケースもよくあるそうです。そして住む権利が無いということで退去させるにも代替の公営住居を探してやるなど、退去してもらうにもかなりの時間が必要であることが多いですね。
最近のネット社会ではスコッターのやり方ハウトゥーものが検索するとそれこそ山のように出てきます。
完全にタダ住みを享受して利用しているタイプ、または鍵を壊して侵入して鍵を取り替えるまでのスコッターの第一段階をやり家へのアクセスを可能にし、無知な人々または不法だとわかっていても利用する人間に紹介料を要求して新しい鍵を渡すプロの犯罪人のいわゆる教科書になっています。
まず最初に鍵を壊して入る、そして鍵を交換する→電気ガスの名義書換(新規開設)→玄関や郵便受けの表札を換える、これがスコッターの初期必須作業だということです。
スコッター問題解決には?
このスコッターに悩む不動産所有者の助っ人として問題解決を代行する業者もあり、有名どころでは月40案件ほどをコンスタントに処理、繁盛しているそうです。
そんな百戦錬磨の業者でも不法居住者に人通りの多い外で接触を試みても、攻撃的な態度で「だから、ちゃんと契約してるんだって言ってるんだよ」との一点張りでらちがあかなかったりの場合が多いのです。時には立ち退き料、または代替の住まい(公営住宅等)を探す、など対応策も様々。
また、最初に出てきたカンヌ近くの一軒家の件がこのほどメディアにも大きく取り上げられ、スコッター退去に関する法律の改正が10月初めに国会を通りました。
主要な住まいあるいはセカンドハウスにかかわらず、住居の持ち主がスコッター後すぐ発見して(セカンドハウスの場合実際にその場に持ち主は居ないので通常は全く不可能)警察に届け出たら48時間以内に退去命令を出すか否かが決定され、その後24時間以内に退去しなければ警察による強制退去がなされることに。それでも住居所有者によるスコッターされている旨の証拠の提出が必須なのでそれも用意する必要があり、さらにこれは所有者が賃貸する物件には当てはめられないようで、やはりスコッター問題解決代行業界は当分安泰ということでしょうか。
どうすれば防げるのでしょうか? 現地に信頼できる人が居て様子を見てもらえるとしても隣に住んでいるような人でなければ毎日のように見回りは不可能でしょう。やはり高価なセキュリティーシステム導入でしょうか・・・?
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