フランスと日本の<結婚観>の違いって?

先日たまさか見たニュースサイト、その中で日本滞在経験4年のある30代フランス女性が書いた(あまりに文法的ミスが無いのでおそらく細かい部分は日本人編集者が訂正、またはゴースト翻訳者が原文を翻訳したのだなと推測)日本人女性の結婚願望をフランス人の立場から見てコメントした記事に目が止まりました。

日本の女性は基本的に結婚願望が高い?

まず最初に日本人の女性の友人が年賀状に「今年こそ結婚できますように」との願いを書いていたというエピソードから始まり、日本人とフランス人の結婚という制度に対する考え方と社会制度の違いを明らかにしていっていますが、これはすごく納得できました。(共感したのではありませんが)

日本に住んでいる人はフランスの社会事情をよく知らないのでこの部分は読者にはすごく興味を持って読まれただろうと思います。
女の子同士の会話の内容の違いや”お一人様”が認められない社会がフランスであるとか、私としてもこれまでは目に鱗がついていた様な感想です。もっとも日本のお一人様文化も21世紀になる頃から根付いて来たはずで、私がまだ若いきゃぴきゃぴの女の子だった時代には一人で行動する女性はそれはそれは変な目で見られていましたが。

フランスでは三者三様、だけど・・・

ここでは一般日本人にはあまり馴染みのない「コンキュビナージュ」「PACS」が紹介されていますが、要するに日本とは法律も社会システムも違い、日本人が抱くような結婚に対するイメージも考え方も異なる層も多数派として存在します。著者ははっきりとは表現してはいないけれど日本からフランスに帰国してまもなくパートナーと同居して「コンキュビナージュ」、そして子供を設けていますが、これが日本だったらかなり難しいですね。著者も書いていますがやはり周囲から結婚の圧力があるのに決まっていますし第一本人達が「籍だけでも入れようか」などと動くでしょう。

その環境の違いの紹介はフランスの社会について知識のない人には興味を引くものでしょう、しかしながらこの文頭のフレーズはいただません。

「今年こそ、結婚できますように!」。そのメッセージはますます悲しく聞こえてきた。

おそらく文章をユーモラスな雰囲気で持って行きたいのか奇抜な文頭で客引きがしたいのかだとは思いますがなんだかこの著者の世界観が見えてしまいます。
結婚していないが同居する彼氏が居て子供も居る、事実上生活している面では結婚している女性と変わりない一応幸せな<勝ち組>な人が、年賀状に書くほどかなりの結婚願望があるものの結婚できない寂しい独り身女性に対して抱く優越感、そんな感じも受けます。

そしてこの文の主の日本人女性にも実は彼氏が居るが結婚話にはならないのでは?という疑問には行き着きません、そんな人、それも既にアラフォーにもなっている人はこういう文章はまず書かないでしょう。

また著者自身も彼女の親戚のフランス人女性も同じ様に早く結婚したい願望があってそれがかなった、と言っているので何も日本人女性だけが結婚願望があるのだとは言えないはずですよね。それに日本人女性にも独身でいる方を選択する人達も存在するのです。その意味でも
このエッセイの目的がわからなくなって来ます。

日本とフランスの法制度および一般の社会における風潮の比較が本来のテーマであったようなのですが、このエッセイは話の持って行き方が独断的で失敗しているのだと思いますね。記事を読んだ日本人からのコメントも見たところ反感を持つ意見が多数を占めてしまっています。

蛇足ながら推測するに、この人は日本語が出来るフランス人としてこれから日本のマスコミに売り込みをかけたいのだと思います。それで結構話題になりそうなテーマで勝負したのが、大多数の日本人には裏目に出てしまった、そんなところでしょうか。いうなれば市場調査不足。

・・・日仏カップルの場合は?

さてこの記事を読みながら改めて考えてしまったのが、日本人とフランス人の組み合わせの場合です。
留学生などとして滞在中、「同居」関係になっている場合も普通に多数あるはずです。これって仏式に言うと「コンキュビナージュ」でしょう。
日本人の方が日本に帰国したら関係解消かもしれませんがこれはこれで理にかなっていると言えます。

一方日本人側がフランスの滞在許可を取りずっと生活しているカップルはフランスに特有の制度があるため何通りにも分けられます。
PACSで子供が出来てもずっとそれで過ごしている日本人、初めから(日本人一般の感覚と滞在手続き上では一番正当に)結婚している日仏カップル、例外的にはとりあえずPACSにしておいてしばらく後やっぱり結婚したカップル、など。

特殊ケースとして仏国籍の相手の元嫁(元旦那)が離婚の手続きをしてくれなくて仕方なく”法律上何も決めてない同居”の場合も起こり得る話ですが、滞在許可を取る必要性からさすがに「コンキュビ」で済ますケースはすでに自前で職業上または学生研究者として滞在許可を用意出来ている場合を除いて通常はありません。

「とりあえずPACS組」は外国人には一方的に不利な「コンキュビ」をを避けて後で正式な結婚手続きに入る、ということなので「結婚組」に入れてもいいでしょう。しかしほぼ半永久的にPACSのままで居るケースも私の周りにありました。(過去形なのは当地には日本人がそばに居
ないためで深い意味はありません)

中には滞在期間が既に5年以上あり、子供も2人居てもし結婚していれば確実に10年カードを発行してもらえるはずの人がいまだにPACSのせいで毎年滞在許可の更新をしているケースとか、PACSでは滞在許可申請も難しくなって来たと言いながらそのままの人とか・・・。

パートナーの仏人男性が高級サラリーマンかなにかで高収入だけどもしも離婚した場合財産を分けないといけないから怖いのかしら?と思うにも財産分離制にしてきちんと書面にしておけばそんなことにはならないのですけれどね・・・。

彼女たちの本当の状態、家庭の事情にはそこまで立ち入った質問も出来ないので「あら、そうなの」で済ませてはいたのですが、もしこれがPACS制度が出来る1999年以前なら選択の余地が無いので全員結婚していたはずですよねえ。

PACSはなるほど簡単で書類を揃えて提出すればそれで済み、嫌になれば弁護士など不要でPACSの終了手続きをすれば簡単、日本の役所への届けより面倒ですが仏式結婚/離婚よりはるかに簡単です。

フランスの結婚手続きは書類を揃えて出した後市役所の入り口掲示板にこの2人がこれから結婚すると住所職業名前付の宣言ポスターがしばらく掲示され、(さすがに写真はありません)反対者が(通常はいないです)なければまたその後何週間か経ってやっと結婚のセレモニーが出来るの
です、紙切れ一枚出せば証人の同席も不要な日本の役所と大違い。

悲しくも離婚となった場合、現在は必ずしも裁判所へは出廷しなくて良くなりましたが弁護士を間に立てる必要はあります。また未成年の子がいる場合は相変わらず裁判所詣でが必要です。いずれにしてもすごく面倒。PACSがいい、という人達の心情はよく理解出来ます。

制度が出来てもう17年、当時新しかったPACSを選択した人達も(別れていなければ)中年世代になっています、このままこれを続けていくのでしょうか?それとも遅ればせながら結婚へ?みんなそれぞれだと思います。

そういえば既に仕事の関係で10年カードを持っていた故にPACSも結婚もしてなかった人がリタイア直前の時期になって結婚に踏み切ったケースもありました。これはパートナー氏の決断の部分も大きいのだと思います、フランス人的にはどっちでもいいと考える人もすごく多いのですがやはり結婚という形にしてけりを付けたのでしょう。

読者の中にもPACSの是非について意見が分かれると思います。もともと同姓間の結婚が出来ないことへの解決策として出来たと言われるPACSですが現在はご存知の通り同姓同士の婚姻も可能なので存在価値について?マークが付けられることになるかも知れません。私が見た感触ではフランスの制度の中には選択肢が多いために混乱を呼んでしまうことも多々あるのですが、
これもそのひとつなのでしょう。

私は21世紀になってこちらで結婚しましたが、もし自分が滞在許可の必要が全く無いフランス人だったらどうしたでしょうか?

・・・ケース・バイ・ケースでしょう、としか言えないですね。

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