日本のTVでも速報扱いで報じられた、元フランス大統領ジャック・シラク氏の訃報。
ご存知のとおり元大統領は日本びいきでも有名で1995年にパリに相撲力士を招致してしまったほどです。シラク大統領はもちろん政治家として大変有能な方でしたが別のジャンルである非西洋文化、エスニックアートへの深い造詣を持つ、異文化の理解者でもありました。特に日本文化についての知識は高く深く、ものによっては私達が知らない専門的な事柄まですっかりご存知だったとか。
と語られたこともあるそうですが、政治家は多忙なのでやはり日本語のような手間のかかる勉強は無理だったのでしょうか。
始まりは日本流に言うと中学生の時、通学路の途中にあったギメ美術館に入ってみたところ、東洋の美術、特に日本の展示物に魅了されハマってしまったそうです。感受性の高いティーンエージャーの頃に受けた感動は生涯に渡って保たれ、公私合わせた訪日回数は50回以上(70数回とも?)だという事です。
大統領の名を冠したケ・ブランリー美術館
さて、数あるパリの美術館でも新顔のケ・ブランリー美術館。ルーブル美術館に置くことにしていたエスニック(非西洋)美術品/博物資料を一同に集めシラク大統領が音頭を取り任期ぎりぎりの2006年に開館されました。ここではモダンな建物の外観とはまた異なる南北アメリカのインディオ文化も含めたアジア、アフリカのプリミティブな風情の美術工芸品の数々を鑑賞することができます。
引退後もよく顔を出されていたそうですが、最後の方は車椅子での来館になってしまっていたそうでした・・・。
開館から10年を記念して美術館の名称にシラク元大統領の名前を付け加えられたのですが、奇しくも長らく心の病を抱えていた長女のローランスさんが亡くなった直後になります。当時夫人共々憔悴しきった状態であるとちらっと報道もされていましたが、ここ3年ほどは現在の状態も表立てされてはいませんでした。数年来患っていたアルツハイマーが刻々と進行していたのでしょう。
およそ半世紀に渡って活躍され、飄々としたお茶目な、とも形容できるキャラクターで人々を魅了、会った人のほとんど全員がファンになったとのことです。またイラク戦争にも断固として反対したフランス最後のカリスマ的大統領でした。これほど人々を愛し、また愛された指導者はおそらくはこの方で最後でしょう。
朝早くから夜遅くまでたくさんの人達がエリゼ宮での弔問記帳やアンバリッド、そしてサン・シュルピス教会での葬儀ミサ(関係者以外は屋外)に訪れていますが、中には大統領の在任中をライブでは殆ど知らない20歳前後の人も多いのには驚きます。まさに国民的政治家でした。
ところでこのケ・ブランリー美術館は亡き大統領への追悼で10月11日まで無料になるそうです。
パリに居る人、旅行で来る人は行ってみてくださいね。ちなみにここの最上階にあるレストラン、レゾンブルは絶対予約必要でカジュアルウェアは❌ですが、かなりのレベルのお勧めレストランです。(それなりにお値段は張ります。私は役得でお試しコースを試したのですが)