警察案件2件

2019年10月も半分過ぎてしまいましたが、この半月ほどの間警察がらみの世間で大きく騒がれた事件が2件ありました。

目次

Internal Affairs

犯人はミカエル・アルポン、45歳。カリブ海の海外県マルチニックのフォール=ド=フランス出身。

 

 

 

  *写真が大きいと気味悪いので小さくしてます。

 

1件目は日本でも少し報道されたもので、内部勤務者による警察本庁の殺傷テロ。テロリストは入り口付近まで来たところを騒ぎを聞きつけて馳せ参じた警察学校を卒業したばかりで入り口を警護中の新人警官が射殺。
この新人さんは研修6日目であったということです。レジオン・ド・オノールが与えられるはずなのですが、犠牲者を気遣って表に出たくないということで授与式保留。本人の本来の希望は警察犬部隊勤務ということですが、早々に叶えられるのではないでしょうか。


この特殊な事件の詳細を語るのは本当におぞましいのですが全体をさくっと箇条書きにすると、

  1. 2003年  アルポンは情報局のITメンテナンス担当として採用される。※70%の難聴の障害者。
  2. 2008年頃 イスラム教に転向。そのころ妻(モロッコ出身)と知り合う。
  3. 2014年  現妻と正式に結婚。(その後子供2人が出生。)パリの北郊外ゴネスの集合アパートに居住。結婚前に一度DVで警察沙汰になった経緯もある。
  4. 2015年  1月7日~8日のパリのシャーリー・エブドのテロの後、同僚の前でもほくえそむ以上に嬉しがっていたということ。
    また、その頃あるいはその前年ごろから以前のようには女性の同僚には近づかず距離を保つ傾向にあった。
  5. 2015年  11月13日、パリの同時多発テロ、別名バタクラン劇場事件が起こる。
  6. 2016年  6月13日、パリ近郊イブリンヌ県で警官カップルが自宅に侵入して来たイスラム国の名を語るテロリストに惨殺。(犯人が警官の家をどのようにして知ったかは当時は謎)
  7. 2019年  10月3日、未明にアルポン宅からの「アラーアクバー」の叫び声を隣人が聞いていた。 9時前に通常通り登庁。しかし午前中はずっと真っ暗なPC画面に向かって座り仕事はしていなかった模様。11時20分頃から30分間に渡って携帯(スマホ?)で妻とSMSのやり取り。(これも仕事せずにやっていた)主に宗教的な言葉のやり取りは最後に「アラーアクバー」で締めくくられた。12時過ぎに「ランチ」外出。徒歩数分のサン・ジャック通りの雑貨店で刃渡り20センチの包丁と牡蠣ナイフを購入。(レシートは受け取らず)直帰ではなく回り道をして物陰で上着の下に買い物を隠蔽。セキュリティーゲートの無い職員通用口から入り、13時数分前に席で昼食中の2名に襲いかかり惨殺。その後他の場所に居た3人目被害者の同僚を襲った後、別の部屋に押し入ろうとしたが中から鍵が掛けられており断念、階段に向かいちょうど階段を使っていた女性警官を殺害、その後1階ホールでエレベーター待ちをしていた女性職員の首に大怪我をさせた。そのまま表入り口につながる中庭に来たところ、入り口の警備にあたっていた研修中警官に10数メートル正面から対峙、「凶器を捨てろ」との声に耳を貸さず逆に襲いかかったところ、銃撃2発を受けて死亡。

 

テロ攻撃のあらましは上記の通りですが、その後の調べにより、とんでもないことが明るみに出ました。

アルポンは情報局のITメンテナンス担当であったので、当局の情報データに容易にアクセスできた訳です。

また、障害者ということで色々ストレスがあり、自分の立ち位置には必ずしも満足してはいなかった、上司や同僚とも葛藤があったらしいことが伝えられています。
そして勤務室の机や家宅捜査から得られた持ち物を色々調べると大容量USBが発見され、その中にイスラム国に関係するもの(画像等)は当然のことながら、大量の警察勤務者の名簿(住所、なども含む)データが含まれていたのです。

これには調べている人たちも凍りついたのではないでしょうか。

私は初めアルポンは外部から侵入したただのテロリストだと思っていたのですが、事件の詳細が報道され、内部勤務者、しかも最も簡単に情報データが入手できる立場にあったことで最悪の証明だと思います。その時2016年の警官自宅襲撃事件が頭に浮かびました。なぜ自宅の場所を知られていて、帰宅前に待ち伏せされたのか?

アルポンはこれまでにはテロ組織との接触の記録は残されていなく、ノーマークでした。数年前から時に怪し気な振る舞いを指摘する同僚がいたにもかかわらず、放置プレイされていたという、情けないお話でした。

密かに内部データを盗み組織に流していた?
2015年の2度に渡ったパリのテロが警察の情報調査網をかいくぐってやすやすと完遂できた理由は・・・?

不祥事以前、内部起因の大事件。


国は違ってアメリカの話ですが昔からあそこはヤクザ警官も多く、警官を調査する警官まで存在し映画にまでなっています。こんな制度も必要なのでは?

from: amazon.com

↑ハリウッド映画「Internal Affairs」(邦題 背徳の囁き)、リチャード・ギアの悪役ぶりが見もの。

 

調べが進むにつれ、アルポンの住居に近い地域から過激思想グループに属する容疑者が何人も挙げられ、さらに通っていたモスク(イスラムの宗教施設)のナンバー2指導者はテロリスト認定されて国外追放命令が一旦出ていたものの、家族(妻と子供たち)の存在によって情状酌量が出て免がれていたという、ざるそばならぬザル処置!!!

ところでパリの公共交通機関では思想的に危険な人物がこれまで何人も解雇されています。乗客の命を預かっているのですから当然ですよね。

でも警察のみならず鉄道とかにそんなアヤシイ人物がワサワサ居たら・・、と考えるとこの国の安全環境はイエローカード並なのかも知れません・・・・。

『御用!』は取り違えだった

さて警察内部分子によるテロの一週間後の金曜の宵、大々的に『グザビエ・デュポン・ド・リゴネ、英グラスゴーで逮捕!』との報道が流れました。

デュポン・ド・リゴネという人物は8年半前の2011年4月、大西洋岸の都市ナントで妻と4人の子息と娘を殺害後逃亡し、その後南仏アルプスとニースの間付近で消息を絶ったのですが、捜査はもちろん継続されていました。

金曜の夕方CDG空港で彼らしき人物(指紋がよく似ている)がグラスゴー行の便に搭乗したという知らせが流れたのですが警察の到着が離陸には間に合わずグラスゴーにて確認するということになり、”グザビエ”はグラスゴー到着と同時に身柄拘束、警察の留置場で一晩を過ごし・・・。

顔が全くもって似てない。それにデブすぎるし身長が15センチほども低い。

すでにこんなグラスゴーの警察のコメント。

しかし、なぜかすぐさま自宅の家宅捜査。ガレージをこじ開けてなにかを運び出しています。

From: francetvinfo.fr

 

 

そしてメディアの報道が過熱、『”グザビエ”は3度ほど整形手術を受けたようだ』とまで。(失笑ものですが)

翌朝土曜日のナント近辺の新聞も一面に大見出しで逮捕を報道してました。

しかし・・・・。

土曜日の午前中の”グザビエ”の自宅の近所の人たちの言は、


かれこれ何十年もの付き合いで2011年以前からずっとここに住んでいたことは確かだし、スコットランド女性と結婚している関係で昨日グラスゴーに行ったはず、絶対に人違い。
こんなものばかり。
そして極めつけは正午ごろDNA検査の結果、
 
まったく別人でした!
 
早速開放されたものの、一晩訳の分からぬ逮捕で拘束され、自宅のガレージに侵入、持ち物を持ち出されたこの人は、とんだ災難でした。
訴えられたら絶対に負けるけどきっと示談にもっていくんだろうな・・・・と。
 
まだ確証のとれないうちに大々的に報道してしまったメディアの責任は大きいです。笑い話のひとつで済みそうな出来事ですが、早々と家宅捜査してしまったりの捜査方法にも手落ちがありますよね。 😯 
 

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