7月12日はXデーだった
日本でもニュースになってましたが、12日についにワクチン接種を証明する衛生パスの大々的な導入が発表されました。
ロックダウンが解除された時から思っていた通りに、感染力の強いデルタ株の感染者がこれまでにないスピードで広がって、同じくウイルスの勢いが再燃したスペインと隣合わせで、しかも早めのバカンスを楽しむあちらこちらから来た観光客が6月になったとたんに押し寄せた当地ではコロナ禍始まって以来、国内の感染者数のトップに躍り出ました! とは言っても全然自慢にはならないのですが・・。それで14日から街に1個あるSNCF(国鉄)駅構内にワクチンセンターが作られ、来た順番に接種できるようになっています。
確かに今月始め頃から戸外ではマスクをしてない人の方が多く、しかもほとんどバカンス客なのでのんびり大声で会話しながらグループで歩いたりテラス席に陣取ってアペリティフを楽しんでたりで、全く気配りしてる様子も無いのです。気を使って満員のテラス席のそばを通らないようにしていますが、すごく不安、ワクチン打っていても感染はするんですよね。無症状で済むでしょうが感染していると人に移す可能性があるので、知らずに運び屋にはなりたくないです。
実はフランスでは6月からワクチンを受けに来る人が激減、閑古鳥が鳴いていた接種会場も多かったようです。若者、それから未成年者への接種も受付可能になった途端、接種希望者が減ったのは皮肉なお話でしたが、同時に飲食店の店内席の営業を許可したり、屋外ではマスクの義務を撤廃したり、近隣の国との一応自由な行き来を復活させたりした結果、また感染が広がってしまいました。
予想はしていましたが、2週間後が怖いです。現在低めに抑えられている重症者や死亡者の数がまた上昇すると思います。
この状態が問題になった先週、翌週月曜に大統領のTV演説があると発表、何を言うのだろうかとあまり期待もしないで観たら、
ロックダウンも夜間外出禁止も閉店規制も、人々の移動規制も無く、ただただワクチン接種を推し進める
という、罰則を含む新規律の発表でした。ここまで思い切ったものとは思ってなかったのですが、ヤッターって思いましたね。内容を聞くとマクロンもうまい方策を思いついたものです。
看護師や医療補助者など、医療従事者など業務で病人や高齢者に日常的に接する職業のワクチン義務化についてはかなり話題になっていたのですが、一般の人たちにも『ほとんど義務に近い規則を作った』のです。
衛生パス(EU Degital Covid Certificate)が通行手形として機能する世界がやってくる
内容は、
- 医療従事者へのワクチン接種義務化。打たない者を9月15日を区切りとしてチェックし警告、2ヶ月の猶予を見て解雇の処遇ができる。
- 7月21日から50名以上が集まる娯楽及び文化施設で衛生パスの提示が求められる。(これは序の口)
そして、 - 8月以降は飲食店、大型商業施設、病院、高齢者施設、医療社会施設、長距離移動の航空機、TGVなど長距離移動の列車、長距離バスにおいて、そこに入る者は訪問者・利用者・職員・従業員にかかわらず、ワクチン接種証明(あるいはPCR検査の陰性証明)の提示が求められる。*9月末までは12~17歳の子供は免除(7月22日更新)
- 9月の新学期から学校においてワクチン接種キャンペーン開始。
- 10月から現在無料の感染テストを有料化。(ワクチン非接種者が証明に使うためほぼ無制限に利用するのを防ぎ、ワクチン接種に導く及び社会保険でカバーするにも限度があるため)
この中で一番当事者にとって厄介なのは、赤字のところです。要は病院や老人ホームだけではなく、他に一般大衆を受け付ける施設(=飲食店、大型商業施設、駅、空港、長距離バス、美術館、etc.)の店員や受付係などもワクチン接種の証明が求められるようになるってことではないですか?? 8月からの実施に今からでは間に合わないケースも続出、しかも飲食店や商業施設の入り口でのチェック、どれだけ厳密に正確にできるかどうか・・・。
すでにワクチン接種証明の不法取引も摘発されています。さらに偽造衛生パスポートも、とあるネット上で300ユーロで販売されているようで、今後偽造書類との戦いも始まりそうですし、店とつるんだ不法入店も後を絶たないでしょう。このあたり、今後の課題でしょうね。
ワクチン予約がバズりました
問題は色々あるにしても、おかげでワクチン接種希望者の数が跳ね上がりました。12日の放送直後、30分もしないうちにネットを通して2万人の予約が入り、その夜だけで100万人近くが予約、サイトがバズってアクセスできなくなったケースも。その後2日間で約300万人の予約が入ったそうですがもすぐには接種できないで2週間待ちとかもあるようです。
ただ、上に書いた駅のワクチンセンターなど急遽作った会場や、バカンス地などでのワクチンテントで予約なしに打てるところが増えているので13日に80万人、16日には88万人近くが接種しています。
というようにほぼ連日記録更新の状態。1回接種のみのJ&Jのワクチンは少数派なのでいずれもまだ2分の1回目で、すぐには効果は出ないのですが、予約は最初から日を決めて2回分できますのでみんなこれで確実に衛生パスをもらえると安心しているようです。
大統領の演説一回で予約サイトがこんなにバズって効果超大ですね。ちなみに演説直後の年齢別予約者の図を見ると、やはり若い年代層で未接種が多い(多かった)ようです。
ちなみに今回の衛生パスの義務化には6割以上の人々が賛成しています!
covid-19の被害を最低限に抑えるにはほぼ全員ワクチンを接種して免疫を付け、感染しても無症状または軽症、そしてウイルスが体内で増殖することを抑えることで他人に移す可能性を最大限に減らすことで対抗する以外にはないと思います。ウイルスを完全に締め出すことはおそらく不可能で、今後はコロナウイルスが『ただのウイルス』になってできるだけこの世に少なく存在するように工夫して生活するしかないでしょう。
大統領の賭け?
マクロン大統領の決断は専門家の助言を参考にしているのは明らかで、イギリスの方針とも違っています。イギリスはワクチン未接種者へのこのような半強制措置は取らず、すでにワクチン接種は十分ということにして制限解除をしているので専門家からの大きな疑問と批判を呼んでいます。https://www.afpbb.com/articles/-/3357146
この強烈なお触れが成功するかはまだ不明ですが、実は12日の演説の後半では、年金制度と失業手当制度改革についても述べています。これは現在62歳定年をさらに先に伸ばし、公務員の早期退職特権を撤廃するプランそして失業手当等の条件をよりシビアにする内容ですが、コロナ禍で中断されていたものです。失業手当については来る10月に改革に入るということですが、コロナ直前に大きな反発(=長期スト)を呼んだ年金制度改革もまだまだ諦めてはいないようで何が何でもやり通すのではないかと感じます。実際周りの国を見ても62歳で定年なんてところは若干を除いてほぼ無いです。
ただ、今回のコロナ対策が英断であったということになったとしても、こちらを強行するとそれなら来年の再選はどうなるかということになるでしょう。賭けみたいなものですが、すでに2018~19年の黄色いベスト運動を見てもわかるように反発する人々がかなり存在することは確かです。実際今回の衛生パス『強制』に反対のデモがあちこちで起こっていますが、黄色いベスト運動の人たちも大勢加担しています。
それとも、もしも再選されなくても後年誰にも出来なかった勇断を推し進めた大統領として名を残すことを望んでいるのでしょうか・・・。
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